概念
外力によって関節が正常範囲以上の運動を強制されて、関節面相互の位置関係が失なわれ、両者が完全に接触を失なったもの。
種類
- 外傷性脱臼
外力に起因する脱臼であり、関節包の損傷を伴ない、関節部変形が必発である。 - 病的脱臼
脱臼が外力によらないものであり、関節包に損傷のない関節内脱臼となるので、関節内出血は伴なわない。 - 麻痺性脱臼
症状
- 運動時痛と疼痛による運動制限
- バネ様固定
脱臼した関節は一定の肢位に固定され、他動的に動かすと弾力性のある抵抗を示す特徴的な所見である。 - 関節部変形
正常な関節の輪郭を失ない、階段状の変形や患肢の短縮が見られる。
合併症
- 反復性脱臼,習慣性脱臼
関節が繰り返し脱臼するようになったもので、肩関節脱臼に好発する。 - 動揺関節 flail joint
正常範囲を越えた可動性を示す状態であり、肩関節脱臼に好発する。
治療
合併する骨折の有無に関わらず、たとえ傷害部位が腫脹していたとしても、受傷後すぐに整復する必要がある。整復後は関節包が修復される3週間ほど固定が必要となる。
肩関節脱臼 dislocation of the shoulder
概念
手を突いて倒れたときなど、上腕外転・外旋位で長軸方向に圧迫が加わった場合に発生しやすい。外力が上腕骨頭に対して増幅して作用し、骨頭が烏口突起下にはずれる前方脱臼が約9割を占める。若年者で安静・固定が十分でない場合に反復性になりやすい。
分類
ほとんどが前方脱臼である。
- 前方脱臼 anterior dislocation of the shoulder
- 後方脱臼 posterior dislocation of the shoulder
症状
肩関節に疼痛があり、三角筋部の外側の膨隆がなく、肩峰が突出してみえる。肩関節は自動も他動も不可能で、他動のさいにはバネ様固定を呈する。
治療
静脈麻酔で短時間眠らせて徒手整復を行なう。徒手整復後3週間は内旋位固定を行なう。
- ヒポクラテス法(Hippocrates法)
- コッヘル法(Kocher法)
- 挙上位整復法(Milch法)
(外傷性) 股関節脱臼 dislocation of the hip
概念
外傷性脱臼としては、正面衝突の交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたとき発生することが多い。発育性股関節脱臼・先天性股間節脱臼は関節包が損傷されない病的脱臼である。
分類
交通事故でダッシュボードに膝をぶつけて股関節脱臼となった際は、後方脱臼が多い。
- 前方脱臼 anterior dislocation of the hip
- 後方脱臼 posterior dislocation of the hip
症状
腹部損傷、骨盤骨折、膝関節損傷などの合併損傷が比較的多く重傷となることが多い。
治療
徒手整復法は腰椎麻酔または全身麻酔下に仰臥位で行う。24時間以内に整復しないと骨頭壊死の頻度が高くなる。整復後も4〜6週間のベッド上での牽引を有する。大腿骨頭壊死を防止するため、整復後約3ヶ月間は免荷歩行とする。
参考)東洋療法学校協会編, 臨床医学各論 第2版; p.177-178(整形外科疾患 – 外傷 – 脱臼)
参考)中村 利孝, 標準整形外科学 第12版; p.777-779 (骨折・脱臼 – 外傷性肩関節脱臼)
参考)中村 利孝, 標準整形外科学 第12版; p.801-804 (骨折・脱臼 – 外傷性股関節脱臼と脱臼骨折)
参考)高橋 正明, STEP整形外科 第3版; p.72-75 (上肢外傷 – 肩関節脱臼)
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