免疫複合体は、抗原と対応する抗体が結合してできる複合体。抗原が過剰なときに組織沈着を起こし、補体の活性化や血小板凝集により炎症反応を惹起する。
免疫複合体が関与する疾病
- 全身性エリテマトーデス systemic lupus erythematosus
- ループス腎炎
血中で形成された免疫複合体が腎臓に沈着するか、あらかじめ抗原が糸球体内に沈着し、そこ に自己抗体が抗原と反応して糸球体内で免疫複合体を形成する。 - ループス心内膜炎, Libman-Sacks 型心内膜炎
SLE に固有に合併し、免疫複合体の沈着とそれに伴う補体の活性化によって生じる。房室弁がもっともよく冒される。
- ループス腎炎
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
アスペルギルス抗原に対する IgE 抗体が産生され、I 型アレルギー反応が成立する。続いて免疫複合体が形成され、III 型アレルギーに発展 する。 - 過敏性肺炎
経気道的に侵入した抗原に特異抗体が結合して免疫複合体を形成し、これにより活性化された補体成分が白血球の遊走を促進して肺局所に炎症を生じる。 - 糸球体腎炎
異種タンパクや細菌、ウイルス抗原などにより免疫複合体が産生され、糸球体に沈着する。これにより補体が活性化され、血尿や蛋白尿、高血圧などを引き起こす。 - IgA 腎症
血液中の IgA を主体とする免疫複合体が腎糸球体メサンギウム領域に沈着し、炎症性変化を引き起こすと考えられている (免疫複合体説)。 - 膜性腎症
免疫複合体の沈着によってすべての糸球体の係蹄壁 (基底膜) がびまん性に肥厚するのを特徴とするネフローゼ症候群である。成人のネフローゼ症候群の原因疾患としてはもっとも多い。 - 関節リウマチ
IgG とリウマトイド因子による免疫複合体が関節に沈着する。補体活性化による組織障害免疫複合体が補体を活性化し、遊走した好中球が活性酸素やリソゾームを放出して組織を傷害する。 - III 型アレルギー反応 (免疫複合型) immune complex type
免疫複合体が組織に沈着し、組織を破壊する。- 血清病
- 免疫複合型糸球体腎炎
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
- アナフィラクトイド紫斑病, シェンライン・ヘノッホ紫斑, Henoch-Schonlein 紫斑病
上気道への溶連菌感染後に、スーパー抗原が関与して生じる全身性の壊死性血管炎である。幼児期に好発し、リウマチ熱との鑑別を要する。IgA 免疫複合体による血管内皮障害であると考えられている。 - 壊死性血管炎
血管壁のフィブリノイド変性、核破壊を伴う好中球浸潤、免疫複合体の血管壁への沈着を特徴的な病理像として持つ血管炎。 - 多発性結節性動脈炎
病因は不明だが、免疫複合体の沈着が想定されている。pANCA が検出されることもある。この pANCA は myeloperoxidase に対する抗体であり、最近では pANCA は MPO-ANCA と呼ばれる。 - 過敏性血管炎
抗原に対する III 型アレルギー反応によって免疫複合体が形成され、これが血管壁に沈着して血管炎を惹起する。
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