概念
グラム陰性短桿菌である百日咳菌 bordetella pertussis の感染による急性気道感染症である。三種混合ワクチンの対象疾患の一つである。
百日咳に対する抗体は胎盤を通過しにくいため、ワクチンをうっていない新生児や乳児でも罹患することがある。特に新生児が罹患すると合併する低酸素性脳症によって死亡率が40%にも達する。
病態生理
菌が気管支粘膜上皮細胞に定着し、百日咳毒素を産生して生体の持つ防御機構を撹乱する。
症状
まず1∼2週間のカタル期があり、このときはいわゆる上気道炎症であり、普通の風邪と区別できない。続いて痙咳期に入るとレプリーゼと呼ばれる特徴的な咳を呈する。ただし新生児では咳がなく、無呼吸発作で発症することもある。
- 原則として発熱はない
- レプリーゼ reprise
本症に特徴的な咳嗽発作であり、1回の呼期のあいだに短く連続したスタッカートstaccatoと呼ばれる咳があり、それに続いてウープwhoopingという笛声様の痙攣様吸気を生じる。
検査所見
- 白血球数、なかでもリンパ球分画増加が特徴的である
細菌感染でありながらリンパ球が増加するのは、本症の病態が主に毒素による免疫系の障害にあることに起因する。このためいわゆる炎症反応(発熱・好中球増多・CRP陽性)などは生じない。 - 低酸素性脳症
頻回する咳のために呼吸困難に陥るからである。 - 分離培養
特別のBordet-Gengou培地を用いる。
合併症
頻回する咳発作による低酸素性脳症が最も注意すべき合併症である。
治療
- 抗生剤
マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン)を投与する。ただし菌が毒素を産生する前のカタル期には有効だが、痙咳期では排菌を抑制する目的で投与する。 - 酸素吸入
低酸素性脳症を予防する。
参考)東洋療法学校協会編, 臨床医学各論 第2版; p.5(感染症 – 百日咳)
参考)医学教育出版社, 新・病態生理できった内科学 呼吸器疾患; p.151- (呼吸器感染症 – 上気道感染症 – 百日咳)
参考)矢﨑 義雄 他, 内科学 第九版; p.320-321 (一般細菌感染症 – 百日咳菌)
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