糖尿病 diabetes mellitus, DM




概念

ランゲルハンス島におけるインスリンの合成、インスリンの分泌能の低下、あるいはインスリンそのものの異常とインスリンの作用不全などが原因となって、インスリン作用が欠如もしくは減少した病態。

  • 診断基準
    空腹時血糖が 126mg/dl 以上もしくは75gブドウ糖負荷試験後の2時間値が 200mg/dl 以上ならば糖尿病型と診断できる。2回以上の検査でこれに該当するもの、もしくは1回の検査に加えて多飲・多尿などの症状が加わると糖尿病と診断される。
原因
病態
症状
  • 全身倦怠感
  • 糖尿 glucosuria
  • 脱水
    • 多尿・頻尿
      ブドウ糖の尿中排泄が増加し浸透圧利尿を来たすため多尿・頻尿となる。
    • 脱水による口渇と多飲
  • 筋力低下
  • 代謝性アシドーシスによる昏睡
  • 口唇の異常
  • 動揺性歩行
検査所見

高血糖 hyperglycemia となる。

  • ブドウ糖負荷試験 OGTT
    75gブドウ糖負荷試験後の2時間値が 200mg/dl 以上もしくは空腹時で 126mg/dl 以上ならば糖尿病型と診断できる。これに加えて多飲・多尿などの症状が加わると糖尿病と診断される。
  • 糖化ヘモグロビン HbA1C
    基準値は4∼6%である。
病理所見
  • 白血球の走化性の低下
  • 膵臓での変化
    • 島の萎縮
    • 線維化
    • ガラス様変性 hyalinization1)
合併症
  • 高脂血症

糖尿病の分類

1型糖尿病

膵臓β細胞の破壊によるインスリンの絶対的な不足。Cペプチドが低値で抗GAD抗体が症例の8割で陽性となる。

概念
  • 自己免疫性
  • 特発性(原因不明)
  • 緩徐進行1型糖尿病 (SPIDDM)2)
分類
  • Ia型
    自己免疫疾患
  • Ib型
    抗GAD抗体が陰性のもの
2型糖尿病

インスリン分泌の低下とインスリン抵抗性が併存する。従来のNIDDMの大部分を指す。家族性が多い。肥満が見られる。

その他の機序によるもの
  • 遺伝子異常が同定されたもの
    • β細胞機能に関わる遺伝子異常
    • インスリン作用の伝達に関わる遺伝子異常
  • 他の疾患に伴うもの
    • 膵臓外分泌疾患
    • 内分泌疾患
    • 肝疾患
    • 薬剤によるもの
    • 感染症
  • 妊娠糖尿病

1型糖尿病 type1 DM

概念

膵臓β細胞の破壊によるインスリンの絶対的な不足に起因する糖尿病をいう。ほとんどが20歳未満に発症するが、高齢発症もありうる。

  • 自己免疫性
    受容体に対する自己抗体がリガンド結合や刺激伝達をブロックすることによって機能障害が生じる。
  • 特発性
  • 緩徐進行1型糖尿病 (SPIDDM)2)
分類
  • Ia型
    自己免疫疾患
  • Ib型
    抗GAD抗体が陰性のもの。
病態生理
  • 病因
    もともと遺伝的素因を持つ者が、おそらくウイルスなどの環境因子に暴露された結果、膵β細胞に対する自己免疫反応が惹起され、β細胞が減少するものと考えられている。3)

    • 自己免疫
      MHCクラス2の変異により、膵臓β細胞が自己免疫反応で傷害されてインスリンの分泌が減少する。HLA抗原の種類は人種ごとに特色があり、日本人ではHLA-DR3、HLA-DR4の型が多い。

      • ICA, Islet cell antibodies
      • IAA, insulin autoantibody
      • GAD, glutamic acid decarboxylase
        GADは膵β細胞中の酵素であり、GAD抗体はislet cell antibodyとしてはもっとも多い。
      • ウイルス感染の関与も示唆されている
        コクサッキーウイルスや麻疹ウイルスの感染後に発症する場合がある。
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
    細胞内にグルコースが不足するとATPを確保するために脂肪分解が促進して遊離脂肪酸が増加するが、これが肝細胞でアセチルCoAに変換される。糖尿病ではアセチルCoAがクエン酸回路に入れずにアセトンへと分解されるため、ケトン体を生じる。
症状

10代に全身倦怠感と口渇で発症することが多いが、糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡で発見されることも少なくない。

  • 昏睡
検査所見

Cペプチドが低値で抗GAD抗体が症例の8割で陽性となる点が特徴的である。

  • 尿所見
    • 尿糖
    • 尿中Cペプチド低値
      Cペプチドはプロインスリンが切断されてインスリンとなる際に生じるタンパクの断片である。I型糖尿病ではインスリン産生が障害されているのでCペプチドも減少する。グルカゴン負荷試験にてインスリン分泌を亢進させてから、尿中のCペプチドを測定する。
    • 尿中アセトン体陽性
  • グルカゴン負荷試験 glucagon stimulation test
    生理的にはグルカゴンを負荷すると代償的にインスリン分泌が亢進するが、本症では反応性が低い。II型糖尿病との鑑別に利用されることがある。
  • 自己抗体検査
    • 膵島細胞抗体(ICA)が陽性となる
    • 抗GAD抗体がほとんどの症例で陽性となる
    • 抗インスリン抗体(IAA)が陽性となることが多い
合併症
治療

インスリンの補充療法が基本である。食事制限については児童の場合は成長過程にあることを考慮してカロリー制限などは行わない。なおスルホニル尿素などの経口血糖降下剤は膵臓β細胞が破壊されている本症には無効である。

  • インスリン療法
    網膜症・腎症などの合併症のリスクを減少させる効果がある。ただし過剰投与により低血糖発作を来たすことがある。
  • 栄養療法
    成長の盛んな学童期には摂取エネルギーの制限は行なわない。運動児には運動に見合ったエネルギーを追加して低血糖発作を防止する必要がある。

2型糖尿病 type2 DM

概念

インスリン分泌の低下とインスリン抵抗性が併存するもので、従来のNIDDMの大部分を指す。家族性が多く、肥満が見られる。除外診断の性質を有する用語であり、HLAマーカーや抗ランゲルハンス島細胞抗体と無関係でケトーシスが見られないタイプをいう。

病態生理
  • インスリン抵抗性
    肥満になると脂肪細胞での中性脂肪の蓄積量が増加するとともに、血中の遊離脂肪酸も増加する。過剰な遊離脂肪酸は、インスリン受容体のチロシンキナーゼの活性を低下させ、インスリン受容体の機能を低下させる。加えて高血糖によってGLUT-4の活性が低下する。こうしてインスリンが末梢において十分な機能を果さなくなることをインスリン抵抗性の増大という。
原因
症状
  • 利尿による高度な脱水
  • 多飲
  • 倦怠感
  • 足のしびれ
    しびれは両側性であり、最初に知覚が低下する。症状は夜間に増悪する。
  • 視力障害
  • 昏睡
    主にNIDDMにおいて血糖値が極めて高いために浸透圧性に利尿が亢進して体液の喪失を招き、昏睡に至る。
合併症

糖尿病合併症

急性合併症
慢性合併症
  • 糖尿病性神経障害
    ソルビトールの蓄積に起因する自律神経障害による起立性低血圧。
  • 小血管障害
    • 糖尿病性腎症
      糸球体に結節性病変や尿細管に糖の沈着が見られる。
    • 糖尿病性網膜症
    • 糖尿病性神経症
    • 無痛性心筋虚血5)
      糖尿病などで冠動脈硬化があると、本来ならば心筋虚血で疼痛を自覚すべきであるが、糖尿病性自律神経障害を伴なうために心筋虚血を自覚せず、そのまま放置して急性心筋梗塞にいたる。
  • 大血管障害
    • 動脈硬化
      続発性高脂血症による粥状硬化やソルビトールの増加による血管細胞の変性によって動脈が硬化する。
  • 続発性高脂血症
    脂質代謝の異常から高脂血症を招き、動脈の内膜に脂質が蓄積して粥状硬化をもたらす。脂肪組織に貯蔵されているTGはホルモン感受性リパーゼの作用によって遊離脂肪酸とグリセロールに分解されて血中に分泌される。インスリンはこのホルモン感受性リパーゼの活性を抑制する作用を持つ。ところがインスリン抵抗性が増大した脂肪組織ではリパーゼが活性化されて過剰な遊離脂肪酸が血中に放出されることになる。インスリン抵抗性の場合は代償的に高インスリン血症を来たすが、もともとインスリンには脂肪合成を促進する作用がある。

糖尿病性昏睡 diabetic coma

分類
  • 低血糖性昏睡 hypoglycemic coma
  • 高血糖性昏睡 hyperglycemic coma
    • 糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis, DKH
      主にI型糖尿病において、インスリンの絶対的な不足によりケトン体が蓄積して昏睡に至る。
    • 高浸透圧高血糖症候群(高浸透圧性非ケトン性昏睡 hyperosmolar nonketotic coma, HNC)
      主にII型糖尿病において血糖値が極めて高いために浸透圧性に利尿が亢進して体液の喪失を招き、昏睡に至る。DKHと異なり、アシドーシスは強くない。
  • 乳酸アシドーシス lactic acidosis
    過呼吸を来たす。

高血糖性昏睡 hyper glycemic coma

分類
  • 糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis, DKH
    主にI型糖尿病において、インスリンの絶対的な不足によりケトン体が蓄積して昏睡に至る。
  • 高浸透圧高血糖症候群(高浸透圧性非ケトン性昏睡 hyperosmolar nonketotic coma, HNC)
    主にII型糖尿病において血糖値が極めて高いために浸透圧性に利尿が亢進して体液の喪失を招き、昏睡に至る。DKHと異なり、アシドーシスは強くない。
糖尿病性ケトアシドーシス diabetic ketoacidosis, DKA
概念

1型糖尿病で見られる、ケトン体蓄積によるアシドーシスであり、しばしば昏睡にまで発展する。初発症状の半数近くを占め、生命予後に影響する。

  • 1型糖尿病に多い
    2型糖尿病ではインスリンの機能は低下しているが、ケトン体の形成を阻止できないまでにインスリンが不足することは稀である。
病態生理

細胞内にグルコースが不足するとATPを確保するために脂肪分解が促進して遊離脂肪酸が増加するが、これが肝細胞でアセチルCoAに変換される。ところでアセチルCoAはオキサロ酢酸と反応してクエン酸 となってはじめてTCA回路に入ることができる。しかし細胞内に糖質が不足している本症ではオキサロ酢酸が枯渇しているため、アセチルCoAがTCA回路に入ることができず、アセトンへと分解されてケトン体を生じる。すなわち病態の根底にはグルコースの不足による細胞内飢餓がある。

  • ケトン体産生
    • 代謝性アシドーシス
    • 高カリウム血症
      過剰なH+が細胞内に入るのと交換に細胞内のK+が細胞外に移動して血清中のカリウムイオンが増加する。ただし速やかに尿中へ排出されるため急性期以外ではむしろ低カリウム血症となる。
  • 高浸透圧
    高血糖によって浸透圧が上昇する。浸透圧性利尿によって脱水に発展する。
症状
  • 昏睡
  • 倦怠感
  • 悪心および嘔吐
  • 腹痛
    機序は不明である。急性腹症との鑑別を要する。
  • 低体温 hypothermia
  • クスマウル呼吸
    早く深い呼吸であり、蓄積したケトン体を呼気から排出するための代償反応である。このため呼気はケトン体による果実様の芳香を放つ。
  • 著明な脱水
    著明な高血糖により浸透圧利尿が亢進して脱水を来たす。このため皮膚は乾燥しており、低血糖発作との鑑別に有効である。さらに循環血液量の減少により低血圧となり、これを代償するために頻脈となる。
検査所見
  • 高血糖
    しばしば 400mg/dl を越える。
  • 代謝性アシドーシス
    pHは7.2以下、PCO2は 10mEq/l 以下、HCOM3は 15mEq/l 以下となる。

    • 遊離脂肪酸高値
  • 電解質異常
    • 高カリウム血症
      過剰なH+が細胞内に入るのと交換に細胞内のK+が細胞外に移動して血清中のカリウムイオンが増加する。ただし速やかに尿中へ排出されるため急性期以外ではむしろ低カリウム血症となる。低ナトリウム血症
  • 尿検査
    尿糖(+),尿中ケトン体(+)となる。
治療
  • 速効型インスリン注入
    血糖値は 250mg/dl を目標に低下させる。ただしこれ以上急激に血糖値を低下させると体循環と脳循環の浸透圧差が広がり、脳浮腫を招く危険がある。
  • 脱水の是正
    まずは生理食塩水の点滴静注を行なう。
  • 電解質の補正
    特にカリウムイオンを補充する。高カリウム血症であるにもかかわらずカリウムを補充するのは、実際には細胞内カリウムは欠乏しており、血中カリウムが尿中から速やかに排出されると低カリウム血症に転じるからである。
  • 酸塩基平衡の是正
    重炭酸イオンの補充については議論が分れる。なぜなら急速なアシドーシスの補正によってK+が細胞内に逆戻りし、低カリウム血症が増強されるからである。
高浸透圧性非ケトン性昏睡 hyperosmolar nonketotic coma, HNC
概念

主に2型糖尿病において血糖値が極めて高いために浸透圧性に利尿が亢進して体液の喪失を招き、昏睡に至る病態をいう。特に高齢者に多い。これは視床下部の浸透圧中枢が低下しているために飲水行動をとることができず、徐々に浸透圧と血糖値が上昇するからである。

原因

感染が誘因となることが多い。これは感染というストレスに反応して抗インスリン作用を持つコルチゾールアドレナリンの分泌が亢進するからである。

症状
  • 高度な脱水
    皮膚は乾燥しており、低血糖発作との鑑別に有効である。
  • 高度な意識障害
検査所見
  • 血清浸透圧の上昇
  • 高血糖
    血糖値は800mg/dL以上を示す。
  • アシドーシスの不在
    1型ほどインスリン欠乏状態にはないので、脂肪分解が亢進するまでには至らないからである。したがってアセトン臭やクスマウル呼吸は陰性となる。
治療
  • 生理食塩水で脱水を補正する
    ただしナトリウムイオンの濃度が高い場合はナトリウムイオンを抑えた生理食塩水を補液する。
  • インスリン補充

乳酸アシドーシス lactic acidosis

概念

血中に乳酸が蓄積し、アシドーシスをきたした病態という。乳酸のpKaは3.9と低いので、解離して強酸性を示す。正常では、乳酸は解糖系の最終産物として生成され、肝臓のコリ回路にて代謝され、腎臓にて排泄される。

原因
  • 低酸素症
    呼吸不全やショックなどの低酸素状態ではミトコンドリアでのTCA回路が作動せず、解糖系の産物である乳酸が蓄積することになる。

    • ショック
    • 呼吸不全
    • 重症貧血
    • 一酸化炭素中毒
  • 肝不全
  • 糖尿病
  • I型糖原病
  • ミトコンドリア脳筋症
  • 薬剤性
    • biguanides
症状

過呼吸が臨床症状として特徴的である。

検査所見

代謝性アシドーシスを呈するにもかかわらず、ケトアシドーシス・尿毒症・薬剤性が否定されれば、乳酸アシドーシスの可能性が高い。

治療

低酸素症などの原因の除去を試みる。乳酸加リンゲル液は乳酸アシドーシスでは不適当である。

慢性血管障害

糖尿病性細小血管症 diabetic micro angiopathy

概念

高グルコース状態に起因し、毛細血管および細動脈に生じる機能および形態異常である。

病態生理
  • ソルビトール代謝異常
    細胞内グルコースはある酵素の働きでソルビトールを経てフルクトースへと代謝される。これらのポリオールが細胞内で増加すると細胞内浸透圧が上昇し、細胞機能が傷害されるほか、NADH/NAD+比が上昇して他の細胞内代謝に異常を来たす。

  • 非酵素的糖化反応の増加
    糖がタンパク質に非酵素的に付加されてAGEs(終末糖化産物)を産生し、これが細胞内外の生理活性に影響をおよぼす。
  • プロテインキナーゼCの活性化
  • 活性酸素の増加

閉塞性動脈硬化症 atherosclerosis obliterans, ASO

概念

腹部大動脈または四肢の主要動脈が粥状硬化病変のため狭窄あるいは閉塞し、四肢に慢性の循環障害をきたす疾患。

病態生理

以下の原因が重なって動脈硬化をもたらす。

  • 続発性高脂血症
    脂質代謝の異常から高脂血症を招き、動脈の内膜に脂質が蓄積して粥状硬化をもたらす。
  • ソルビトールの増加による血管細胞の変性
  • 酵素非依存性糖添加による血管基底膜の変化
病因

糖尿病

症状
検査所見
  • 赤血球の増加
  • 血小板凝集能の亢進
糖尿病性壊疽 diabetic gangrene
概念

糖尿病患者に見られる難治性潰瘍であり、しばしば外傷を契機として足に好発する。

原因
  • 閉塞性動脈硬化症
症状

神経痛様疼痛・知覚麻痺につづいて下肢・足底・手指などに紅斑・水疱ついで境界明瞭な壊死巣が出現し、難治性の潰瘍となる。

治療

局所の処置、抗生剤の投与とともに外科医あるいは整形外科医を受診させる。喫煙は控えさせる。

  • 薬物治療
    プロスタグランジンE1などの血行促進剤、アスピリン、ウロキナーゼ、抗生剤など。

糖尿病性網膜症 diabetic retinopathy

概念

眼底の毛細血管における細小動脈症の結果として、血管の閉塞や網膜の浮腫・出血などの変化によって硝子体への出血を来たし、やがて失明に至る。

分類
  • 単純性 (非増殖性)
    眼底に小血管瘤・出血斑が見られる。
  • 増殖性
    増殖性変化では新生血管の増殖が見られる。網膜内または網膜上に大出血を起こし、視力の著しい低下をきたす。増殖性変化は不可逆性であるので、その前に網膜症の進行を止める必要がある。
病期分類

1.無変化
2.非増殖性網膜症
3.前増殖性網膜症
4.増殖性網膜症
新生血管の増生が見られる。

検査所見
  • 眼底検査では
    • 単純性(非増殖性)
      眼底に小血管瘤・出血斑が見られる
    • 増殖性
      新生血管の増殖と硝子体出血が見られる

糖尿病性腎症 diabetic nephropathy

概念

糖尿病に合併する腎病変をいう。糖尿病による腎障害は大別すると,次のように分類される。

  • 糖尿病性細小血管障害が腎糸球体に現れ、糸球体血管径の大小不動、基底膜の不規則な肥厚、糸球体結合組織であるメサンギウム組織の増殖・変性が起こり、糸球体が原尿をつくる機能を失いかつ大量の蛋白の漏出が起こる。
  • 感染症の1つとして慢性の腎盂腎炎を起こす場合がある。神経障害による膀胱機能不全、尿路感染症がその原因と考えられている。しかしながら、腎機能の低下はそれほど著しくない。蛋白尿も認められる。
病期分類
  • 1期
    尿タンパクは陰性であり、ほとんど異常を認めない。
  • 2期
    尿タンパクは陰性であるが、微量アルブミンが陽性である。
  • 3期
    尿タンパクの増加と血圧の上昇が認められ、糸球体濾過量(GFR)が低下をはじめる。
  • 4期
    腎不全の状態。
腎病変の種類
  • 糸球体硬化症
  • 腎血管の動脈硬化
  • 尿路感染症、特に急性乳頭壊死
  • 閉塞性腎症
    糖尿病神経症に続発する神経性膀胱による排尿機能の異常に基づく。
  • 高カリウムイオンを伴う高クロールイオン血性代謝性アシドーシス
    選択性アルドステロン欠損症に続く、遠位尿細管でのプロトンおよびカリウムイオンの排泄障害に基づく。
検査所見
  • 尿中アルブミンの異常高値
病理所見

糸球体に結節性病変や尿細管に糖の沈着が見られる。糸球体の病変には以下のものがある。

  • 結節性病変
    メサンギウム領域に青染する結節(kimmelstiel-Wilson結節)であり、糖尿病性腎症に特異的な病変である。
  • びまん性病変
  • 滲出性病変
治療

糖尿病性神経障害 diabetic neuropathy

概念

代謝障害および細小血管障害により起こった末梢神経の変性・機能障害をいう。多くは知覚神経がまず障害される。また両下肢が対称的に侵される多発神経炎を呈するのが特徴である。

分類
  • 抹消対称性感覚障害, 多発神経炎
    障害は両側性かつ対称的であり、遠位(足底など)に優位な症状が出現する。夜間に症状が増悪することが少なくない。糖尿病の代謝状態によって症状が変化することがあり、多発性神経炎のなかでは自律神経症状が強い点などが特徴である。

    • 感覚障害
      • パレステジー pallanesthesia
        足尖および足底部に初発する振動覚低下のことである。
      • 自発痛
    • 運動神経障害
      • アキレス腱反射消失
    • 自律神経障害
      ソルビトールの蓄積に起因する自律神経障害である。

      • 神経因性膀胱による排尿困難
        知覚麻痺性神経因性膀胱を呈する。
      • 起立性低血圧
      • インポテンツ
      • 麻痺性イレウス
      • 発汗異常
  • 単一神経障害
    単一神経障害は血管閉塞によって特定の筋肉を支配する神経が障害されるもので、一過性のことが多い。動眼神経・正中神経・仙髄神経叢などが侵されやすい。
発症機序

発症のメカニズムは多種あると考えられている。

  • polyol代謝活性化によるソルビトールの蓄積
  • 高血糖により起こるタンパクの糖化
  • 神経細胞のミオイノシトール不足
  • 細小血管障害による栄養障害
検査所見
  • 多発性神経障害については神経伝導障害が陽性となる
  • 単一神経障害
  • 自律神経障害では CVRR検査による RR間隔の固定を見る

参考)東洋療法学校協会編, 臨床医学各論 第2版; p.111-113(代謝・栄養疾患 – 糖尿病)
参考)医療情報科学研究所, 病気が見える vol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第2版; p.2-61 (代謝疾患 – 糖尿病)
参考)医学教育出版社, 新・病態生理できった内科学 4 内分泌疾患 第2版; p.176-201 (糖代謝 – 糖尿病)
参考)矢﨑 義雄 他, 内科学 第九版; p.1464-1495 (糖代謝異常 – 糖尿病)

1) 宮地 徹, 建石 竜平, 病理解剖からみた糖尿病患者, 糖尿病, 1961, 4 巻, p. 11-18
2) 田中 昌一郎 他, 日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会, 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2012)―1型糖尿病調査研究委員会(緩徐進行1型糖尿病分科会)報告―, 糖尿病, 2013, 56 巻, 8 号, p. 590-597
3) 国立国際医療研究センター|糖尿病情報センター,「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病」とは のリーフレットについて, 2018
4) 山門 實, 肥満症の診断,ことに内臓脂肪型肥満の診断と「隠れ肥満」について, 人間ドック (Ningen Dock), 2013, 28 巻, 3 号, p. 492-499
4) 佐藤 譲 他, 糖尿病神経障害の発症頻度と臨床診断におけるアキレス腱反射の意義, 糖尿病, 2007, 50 巻, 11 号, p. 799-806
5) 藤井 潤, Editorial Comment 糖尿病と無症候性心筋虚血, 心臓, 1997, 29 巻, 8 号, p. 649-650


糖尿病対策は行動変容が必要
糖尿病を始めとする生活習慣病は痛いなどの症状が無いので、多くの方々が軽視しがちです。ですが糖尿病は高血圧・高脂血症などとともに長期にわたって身体に少しずつダメージを与えていきます。自分自身と周りの大切な人のために、誤った生活習慣を変えていく必要があります。誰でも頭ではわかっている「食事療法・運動療法」です。食事療法ではマインドフルネスイーティング(注意深く一つ一つの食材を味わって食べる)をおすすめします。また運動習慣を構築するための心理的アプローチとしては「行動変容ステージ理論」が良いと思います。身体の一時的な痛みや不調を改善させるだけではなく、お客様・患者様の生活スタイルや考え方にも影響を及ぼし、その方にとってのより良い人生に貢献する。そんな治療家をぜひとも目指してください。