2018-a059 肩関節脱臼で正しいのはどれか。




1. 後方脱臼の頻度が高い。
2. 関節強直を起こすことが多い。
3. 合併症として腋窩神経損傷がある。
4. 再脱臼を起こすことはまれである。

 


2018-a059 肩関節脱臼で正しいのはどれか。

1. 後方脱臼の頻度が高い。前方脱臼
2. 関節強直を起こすことが多い肩関節脱臼と関節強直は関連がない。

関節強直とは関節部の骨や軟骨の変形や癒着に生じた病変により、関節運動が著しく制限された状態をいう(関節外の変化により関節運動が制限される場合を関節拘縮といい区別される)。相対する関節面が結合組織で癒着するものを線維性強直、骨組織で連結しているものを骨性強直と呼ぶ。

強直性脊椎炎、顎関節強直症、舌小帯強直症、筋強直性ジストロフィーなどで起こる。

3. 合併症として腋窩神経損傷がある。

青壮年者の肩関節脱臼は高エネルギーにより生じることで腱板断裂や腋窩神経損傷を合併することがある。

4. 再脱臼を起こすことはまれである。反復性脱臼へ移行することがある。

安静・固定が十分でない場合、若年者ほど反復性脱臼への移行率が高くなっている。

解答 3


脱臼 dislocation

概念

外力によって関節が正常範囲以上の運動を強制されて、関節面相互の位置関係が失なわれ、両者が完全に接触を失なったもの。

種類
  • 外傷性脱臼
    外力に起因する脱臼であり、関節包の損傷を伴ない、関節部変形が必発である。
  • 病的脱臼
    脱臼が外力によらないものであり、関節包に損傷のない関節内脱臼となるので、関節内出血は伴なわない。
  • 麻痺性脱臼
症状
  • 運動時痛と疼痛による運動制限
  • バネ様固定
    脱臼した関節は一定の肢位に固定され、他動的に動かすと弾力性のある抵抗を示す特徴的な所見である。
  • 関節部変形
    正常な関節の輪郭を失ない、階段状の変形や患肢の短縮が見られる。
合併症
  • 反復性脱臼,習慣性脱臼
    関節が繰り返し脱臼するようになったもので、肩関節脱臼に好発する。
  • 動揺関節 flail joint
    正常範囲を越えた可動性を示す状態であり、肩関節脱臼に好発する。

肩関節脱臼 dislocation of the shoulder

概念

手を突いて倒れたときなど、上腕外転・外旋位で長軸方向に圧迫が加わった場合に発生しやすい。外力が上腕骨頭に対して増幅して作用し、骨頭が烏口突起下にはずれる前方脱臼が約9割を占める。若年者で安静・固定が十分でない場合に反復性になりやすい。

分類

ほとんどが前方脱臼である。

  • 前方脱臼 anterior dislocation of the shoulder
  • 後方脱臼 posterior dislocation of the shoulder
症状

肩関節に疼痛があり、三角筋部の外側の膨隆がなく、肩峰が突出してみえる。肩関節は自動も他動も不可能で、他動のさいにはバネ様固定を呈する。

治療

静脈麻酔で短時間眠らせて徒手整復を行なう。徒手整復後3週間は内旋位固定を行なう。

  • ヒポクラテス法(Hippocrates法)
  • コッヘル法(Kocher法)
  • 挙上位整復法(Milch法)

参考)東洋療法学校協会編, 臨床医学各論 第2版; p.177-178(整形外科疾患 – 脱臼)
参考)中村 利孝, 標準整形外科学 第12版; p.125 (整形外科的現症の取りかた – 関節拘縮と関節強直)
参考)中村 利孝, 標準整形外科学 第12版; p.777-779 (骨折・脱臼 – 外傷性肩関節脱臼)
参考)高橋 正明, STEP整形外科 第3版; p.72-75 (上肢外傷 – 肩関節脱臼)
参考)名越 充, 橋詰 博行, 腋窩神経麻痺を伴った肩腱板断裂の治療, 肩関節, 2002-2003, 27 巻, 2 号, p. 279-282


千代の富士は肩関節の脱臼ぐせを筋トレで克服
かつての大横綱・千代の富士、かっこよかったですよね。比較的小さな身体でも、大きな相手を投げ飛ばす豪快な相撲が魅力できたが、肩関節には多大な負担がかかり、反復性脱臼に悩んでいたようです。そんな千代の富士は、筋トレを徹底的にすることで反復性脱臼を克服していったというのは、有名な話です。

ネットを調べていたら、平成元年、横綱千代の富士が横綱大乃国に勝利して優勝を飾ったものの、左肩を脱臼。支度部屋に引き上げた後に、伊勢ヶ濱親方が脱臼した肩を整復する映像がありました。かっこいい!

YouTube:千代の富士の脱臼を伊勢ヶ濱親方が応急処置する


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