2018-a066 心筋梗塞について正しいのはどれか。




1. 無痛性心筋梗塞は糖尿病患者に多い。
2. 心筋梗塞に伴う胸痛は通常5分以内である。
3. 心電図で最初に出現する所見は異常Q波である。
4. 発症時白血球数は減少する。

 


2018-a066 心筋梗塞について正しいのはどれか。

1. 無痛性心筋梗塞は糖尿病患者に多い。
2. 心筋梗塞に伴う胸痛は通常5分以内である30分以上持続する
3. 心電図で最初に出現する所見は異常Q波である。ST上昇 → T波陰性化 → 異常Q波 → 冠性T波の順
4. 発症時白血球数は減少する上昇する

解答 1


急性心筋梗塞 acute myocardial infarction, AMI

概念

アテローム性動脈硬化によって冠状動脈が閉塞して生じる心筋の虚血性壊死をいう。激しい胸痛で発症し、特異的な心電図所見と心筋逸脱酵素の上昇を特徴とする。

発症のごく早期(2時間以内)に致死的不整脈や心原性ショックを併発し、死亡することも稀ではない。

病因
  • 動脈硬化
    脂質性プラーク1) lipid plaques 内で新生血管の破綻による出血が生じ、これが塞栓となって心筋梗塞を惹起する。
  • 危険因子
    • 喫煙
    • 糖尿病
    • 高脂血症
症状
  • 胸痛(30分以上継続する激しい胸痛)
    締め付けられるような重い胸痛が突発し、しばしば背中や肩に放散する。
    ただし無痛性心筋梗塞もある。(高齢者や糖尿病患者にみられる)
  • 嘔吐や冷汗
  • 心不全症状
    抹消循環障害による四肢末端の冷感を訴える。
  • 心音所見
    • 第4音の聴取
      心尖部で聴取される異常心音である。左心室のコンプライアンスが低下したために代償的に心房が収縮して駆出された血流が心室壁に衝突するさいの音である。
    • 心膜摩擦音

狭心症発作と異なり、硝酸薬投与でも症状は改善しないのが特徴である。

検査所見
  • 心電図所見2)〜6)
    初期には明らかでない場合が約半数で、経過を追ううちにST上昇 → T波陰性化 → 異常Q波 → 冠性T波7)の順で異常所見が出現する。
  • 脚ブロック
  • 心室性期外収縮
    心室性頻脈を誘発することがあるので要注意である。
  • 心筋逸脱酵素の測定
    心筋壊死によって心筋から血中に遊出してくる酵素の活性を検出する。

    • ミオグロビン
      発症早期より上昇するが、特異性は低い。
    • CK上昇
      発症後24時間頃にピークとなり、3日後には正常値に戻る。

      • CK-MB上昇
        心筋特異性が高く発症後数時間で上昇するが、24時間程度で正常値に戻る。
    • AST上昇
      肝細胞と心筋をはじめとする筋細胞に多く含まれ、アミノ酸と糖代謝を架橋する。
    • トロポニンTの上昇
      本タンパクはCK-MBや心筋ミオシン軽鎖とともに心筋特異性が高い。ミオグロビンほどではないが発症早期から上昇し、発症後数日間にわたって高値を示し続ける。
    • LDHの上昇
      発症後24時間ほど経ってから上昇し、1週間ほど持続する。分画ではLDH-1がLDH-2よりも上昇する所見 flipped pattern が特徴的である。
  • 心筋シンチグラム
    タリウムシンチでは心筋壊死部の血流途絶を反映して、その部位がアイソトープの集積欠損像 cold spot として描出される。一方、99mTcピロリン酸シンチでは正常心筋には集積せず、急性心筋梗塞巣に集積して hot spot を形成する。
病理所見
  • 心筋の凝固壊死 coagulation necrosis
    • 横紋の消失
    • 筋繊維の融解
  • 心筋線維の波状化 wavy fiber pattern 8)
  • 心筋線維の間に好中球が浸潤する
  • 心筋梗塞の際に、心筋に生じる変化
    • 直後
      まずグリコーゲンを消耗し、やがて細胞質、特にミトコンドリアの浮腫が生じる。
    • 5時間後:
      心筋は伸長し、凝固壊死する。核ははじめ腫大しやがて消失する。
    • 10時間後:
      間質への好中球の浸潤が盛んになる。心筋にはwavy fiber patternが見られる。
    • 3週間後:
      好中球は消失し、壊死心筋組織が肉芽組織となって線維化する。

狭心症と心筋梗塞の判別(要点まとめ)

狭心症 心筋梗塞
血管 冠状動脈の攣縮による虚血 血栓により冠状動脈が閉鎖
心筋 虚血状態だが生きている 一部が虚血壊死
症状 短時間の胸痛
(数分から15分)
長時間の胸痛
(30分以上〜数時間)
検査 ・ST低下 (心内膜下虚血)
・血液検査数値正常
・ST上昇 → T波陰性化
→ 異常Q波 → 冠性T波
・血液検査数値
– ミオグロビン (1〜4時間で上昇)
– CK (4〜6時間で上昇)
– トロポニンT (3〜12時間で上昇)
– ミオシン軽鎖 (6〜12時間で上昇)
– AST, LDH (6〜12時間で上昇)
– 白血球数増加
治療 ・安静およびニトログリセリン舌下が有効 ・安静およびニトログリセリン舌下は無効
・ただちに救急搬送

 



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